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あなたのつわり、入院が必要かも!重症妊娠悪阻って何?つわりで入院になる基準や治療を解説します

      2018/04/01

妊娠がわかって嬉しい!という気持ちになった途端に、妊婦さんを悩ませるようになるつわり。症状の重さも続く期間もひとそれぞれですが、誰もが通る道、と思って我慢しすぎていませんか?

実は、つわりが重症になると入院して治療が必要になることがあります。

そこで、入院が必要になるタイミングとは?どんな治療をするの?といった疑問を解説します。



このページの目次

重症妊娠悪阻(おそ)とは?つわりとどう違うの?

つわりとは、妊娠5〜6週ごろから出現する吐き気、嘔吐、食事の好みの変化や食欲不振などの消化器症状のことをいい、医学用語で「悪阻(おそ)」と呼びます。

「重症妊娠悪阻(おそ)」とは、つわりの症状がひどく悪化した状態のことをいいます。単に「妊娠悪阻」と呼ぶ場合もあります。

つわりがどの程度になったら重症妊娠悪阻となるかという明確な線引きはありません。症状が悪化し、病院に行って医師が治療が必要だと診断したら「重症妊娠悪阻」という病名がつく、という形です。

産婦人科学会の資料では妊娠悪阻について以下のように記述があります。

つわりと妊娠悪阻の区分は実際には不明確である.(中略)持続する悪心・嘔吐の繰り返しにより,食事摂取が困難となり,栄養・代謝障害を来し,体重減少のほか,種々の症状を呈し,治療を必要とする状態になった場合を妊娠悪阻といい,その主な病態は脱水と飢餓状態である.

引用元:〔産科合併症とその対策〕 妊娠悪阻にまつわる諸問題

では、具体的に脱水、飢餓(きが)のときはどのような症状が出るのでしょうか。

重症妊娠悪阻かも?自分でできるチェックのポイント

具体的な症状は次の4点です。

1.何度も嘔吐を繰り返し、水分を摂ることができない

水分を全く摂れない、もしくは摂ってもすぐに戻してしまう状態が毎日続くと、体が水分不足になります。これを「脱水」といいます。

2.脱水による症状がみられる

脱水になると、体のなかの水分や血の巡りを保とうとする働きから、次のような症状があらわれます。

脱水の症状

  • 尿の回数が普段よりも減る
  • 尿の色が濃くなる
  • 皮膚が乾燥する
  • 激しい運動をしていないのに心臓が強くドキドキする(動悸:どうき)
  • 脈が普段よりも速くなる(頻脈)

3.体重が1〜2週間で急激に落ちる

もともとの体重にもよるため減少の度合いは個人差がありますが、目安としては体重が5%減少したら注意が必要です。

妊娠前のBMIが18.5未満の痩せ型の人は、5%であっても心配な減少量となりますので、より慎重に体重を見る必要があります。

※BMIとはBody Mass Indexのことで、「体重(kg)/身長(m)2 」の指数を計算します。日本肥満学会の基準では、 18.5未満を「低体重(やせ)」、18.5以上25.0未満を「ふつう」、25.0以上を「肥満」とします。

4.尿に変なにおいがある

体の中が栄養不足になると尿にケトン体というものが出るようになります。

ケトン体については後で詳しく説明しますが、ケトン体は「アセトン臭」という独特のにおいがあります。果物の腐ったようなにおい、甘酸っぱいにおいなど色んな表現がありますが、いつもと違うにおいがある場合は要注意です。

いずれかの症状を自覚したら、我慢せずに病院を受診しましょう。



入院となる基準は?どんな検査をするの?

病院では、以下の検査と問診から脱水と飢餓の状態を判断し、治療が必要であると判断したら入院となります。

1.血液検査

ヘマトクリット値(Ht.もしくはHtc.)

血液中に占める血球の割合を示すもので、成人女性で34~45%(平均38%)程度が正常値とされます。脱水のときは血液が濃縮され数値が上昇します。

電解質バランス

カリウム、ナトリウム、塩基などのバランスが崩れている場合は点滴の治療が必要です。

電解質は体の水分を調節したり、アルカリ性や酸性のバランスの調節をする働きがあります。嘔吐で水分だけでなく胃などに含まれる消化液が失われることでバランスが崩れることがあります。

2.尿検査

ケトン体

陽性(+)以上であると、体が栄養不足であることの指標となります。

ケトン体は体のなかで脂肪が代謝されて作られる物質です。

体は通常、エネルギー源として糖分を利用しますが、糖分が足りなくなると脂肪を利用してエネルギーを蓄えようとするようになり、その結果ケトン体がたくさん作られます。

尿にケトン体が出てきているときは、血液の中にたくさんのケトン体がある、つまり栄養(糖分)不足になっているということを示しています。

3.体重減少

上記の検査結果に加えて、体重がどの程度、どの期間に減少しているかという点で、栄養状態の評価をします。

入院の基準は医師によって異なりますが、5%〜10%の体重減少が目安となります。

その吐き気は本当につわり?他の病気の可能性もチェック

妊娠初期の吐き気、嘔吐=つわり、と思ってしまいますが、他の病気が潜んでいる恐れがあります。病院では他の病気の可能性を除外した上で「重症妊娠悪阻」と診断します。

重症妊娠悪阻の診断で考慮しなければならない病気

胞状奇胎(ほうじょうきたい)

異常妊娠のひとつで、胎盤のもとになる「絨毛(じゅうもう)組織」というものが異常に増殖した状態です。絨毛がんという悪性のものに移行することがあるため、できるだけ早い処置が必要です。

消化器の病気

  • 胃炎,肝炎,胆炎,胃十二指腸潰瘍(かいよう)など
  • 腸閉塞,虫垂炎(盲腸)
  • 胃がんや十二指腸がん

いずれの病気も、症状のひとつに吐き気、嘔吐があります。

脳の病気

1.髄膜(ずいまく)炎

脳の周りを覆っている髄膜(ずいまく)という膜が、菌やウィルスなどに感染し炎症を起こす病気です。

2.頭蓋(ずがい)内圧亢進

出血や脳が腫れたりするなど何らかの原因で狭い頭蓋骨内の容量が増え、圧力が高まった状態です。

どちらの病気も症状のひとつに吐き気、嘔吐があります。

糖尿病性ケトアシドーシス

症状のひとつとして、尿のケトン体が陽性になります。

膵臓から出る「インスリン」というホルモンは、血糖(血液のなかのブドウ糖)を一定の量におさめる働きを持っていますが、そのインスリンの働きが不十分で血糖値が高くなっている状態を糖尿病と呼びます。

インスリンが不足して血液の中の糖をエネルギー源としてうまく使えなくなると、代わりに脂肪をエネルギー源として使うことでケトン体が多く作られます。

酸性であるケトン体が溜まりすぎると体に不具合を起こし、悪化すると意識障害や命に関わる状態を引き起こします。

妊娠初期の血液検査で糖尿病を指摘されている妊婦さんは特に注意が必要です。

参考:MSD Manual Professional Version Hypermesis Gravidarum 



入院しないままだとどうなるの?赤ちゃんへの影響は?重症妊娠悪阻が引き起こす怖い病気

重症妊娠悪阻の赤ちゃんへの影響は?

お母さんが栄養を十分に摂れていない時期でも、赤ちゃんは必要な栄養をお母さんの体のなかから上手に取り込んで成長していきます。

重症妊娠悪阻の症状が悪化して他の病気を引き起こさない限り、赤ちゃんへの影響はほぼありません。

そのため、この時期は栄養バランスを考えたり、無理をして食べようとする必要はありません。病院で治療しながら、食べられるものを少しずつ摂り、お母さんの体調を改善させることを最優先に考えましょう。

ただし、治療しないまま重症妊娠悪阻が悪化すると以下のような病気を引き起こすことがあります。

悪化すると怖い病気1:代謝性アシドーシスからの肝機能障害

アシドーシスとは、体の血液が酸性に傾いている状態のことをいいます。

飢餓状態が進んで脂肪をエネルギー源として使用することが続くと、ケトン体が血液や尿の中に過剰に溢れることになります。ケトン体は酸性なので、多すぎると血液を酸性にしてしまい、代謝性アシドーシスという状態になります。

代謝性アシドーシスは肝機能障害を引き起こし、悪化すると多臓器不全脳障害から命に関わる状態になることがあります。

悪化すると怖い病気2:ウェルニッケ脳症、コルサコフ症候群

ウェルニッケ脳症は食事が摂れないことでビタミンB1が不足し、脳や神経に異常をきたす病気です。以下の3つの特徴的な症状があります。

ウェルニッケ脳症の症状

  • 眼球運動障害(目が動かせなくなる、目が細かく震えるなど)
  • 小脳の失調(思うように歩けない、ふらついて倒れるなど)
  • 意識障害

ウェルニッケ脳症はビタミンB1を大量投与することにより命の危険を回避できたあとも、80%にコルサコフ症候群という物忘れや認知症のような後遺症が残ります。

参考:厚生労働省eヘルスネット ウェルニッケ脳症とコルサコフ症候群

悪化すると怖い病気3:深部静脈血栓(けっせん)症

足や骨盤など体の深いところにある静脈に血の塊(血栓)ができる病気です。

その血栓が肺に飛ぶと呼吸障害を起こし、脳や心臓に飛ぶと脳梗塞(のうこうそく)や心筋梗塞(しんきんこうそく)といういずれも命に関わる病気を引き起こします。

一般には「エコノミークラス症候群」として知られている病気です。

重症妊娠悪阻の妊婦さんは、脱水に加えて活動が低下していることで深部静脈血栓のリスクが非常に高い状態です。

これらの病気で妊婦さんの体が重篤な状態に陥ると、妊娠の継続が困難となり人工妊娠中絶をせざるを得ない状況になることがあります。

入院中の治療はどんなことをするの?期間はどのくらい?

入院中の治療は安静と補液、投薬を組み合わせて行います。

1.食事療法

胃を休めるため、必要であれば絶食し、食欲に応じて水分から固形物へ変更していきます。

食事を摂れるときは少量ずつを数回に分けるようにします。

2.輸液療法

以下の3つの方法を症状に応じて組み合わせます。

水分を補給し電解質を補うための点滴

脱水を改善し電解質バランスを整えるため、不足している電解質や糖分を補った輸液を1日2リットルから3リットル点滴から投与します。

ビタミンB群の投与

ビタミンB1の不足からおこるウェルニッケ脳症を予防するため、ビタミンB群を投与します。

高カロリー輸液の投与

食事を摂れないときは、高カロリー輸液という点滴からの栄養を追加します。

3.吐き気止めや鎮静剤(気持ちを落ち着かせる効果のあるの薬)の投与

通常は十分な輸液と安静で吐き気は収まりますが、どうしても症状が収まらないときは吐き気止めや鎮静剤の投与を考慮します。

妊娠初期は赤ちゃんへのお薬の影響が心配な時期なので、お薬の使用は慎重にする必要がありますが、漢方など影響が出ることが少ないといわれるお薬を使用することがあります。

4.その他の薬の投与

ビタミンB6や抗ヒスタミン薬で吐き気が改善したという報告があるため、施設によっては投与することがあります。

参考:2007年9月23日開催 第三回「産婦人科診療ガイドライン--産科編」

5.精神的な治療

重症妊娠悪阻の症状は心理的なストレスにより悪化することが指摘されています。

安静にし、ストレスを取り除くことも大切な治療のひとつです。必要時は産科医だけでなく精神科医の面談も行います。

つわりの症状はとてもつらいものですが、必ず時期が来たら消失します。

入院によって日常生活の大変な行動から開放されて、赤ちゃんと妊婦さんの体のことだけを考える時間をもつことはとても大切なことである、と家族にも理解してもらいましょう。

参考:〔産科合併症とその対策〕 妊娠悪阻にまつわる諸問題

入院の期間は?

治療にかかる日数は個人差があり、数日で退院できる場合もあれば数週間かかることもあります。

尿ケトン体が陰性になり、電解質バランスが整うことや、少量でも定期的に水分や食事を摂れるようになることなどが退院の目安となります。

早く治療を開始すると入院期間を短くできることがありますので、つらいときは早めに受診をしましょう。

気になる入院の費用は?保険の適応になるの?

一般的につわりは病気ではない、と言われるので、治療費が気になりますよね。

重症妊娠悪阻と診断されたら病気として適応となる医療保険があります。

1.公的な医療保険

社会保険、国民健康保険、共済保険など、普段から保険証を使っている保険のことです。

2.高額療養費制度

1の公的な医療保険に付随するものですが、治療費が高額になった場合は「高額療養費制度」というものを使って自己負担を減らすことができます。

高額療養費制度について、厚生労働省では以下のように説明があります。

医療費の家計負担が重くならないよう、医療機関や薬局の窓口で支払う医療費が1か月(歴月:1日から末日まで)で上限額を超えた場合、その超えた額を支給する「高額療養費制度」(こうがくりょうようひせいど)があります。

上限額は、年齢と所得に応じて定められています。

また、いくつかの条件を満たすことにより、負担を更に軽減するしくみも設けられています。

引用:厚生労働省保険局 高額療養費制度を利用される皆さまへ

月の上限額は年収に応じて決まりますが、例えば年収が約370万円〜約770万円の人は、

80,100円+(医療費-267,000)×1%

となり、8万円前後となります。

ただし、差額ベッド代や食事など治療費以外の入院費用は適応になりません。

3.民間の医療保険

民間の医療保険に入っている人は、女性疾患特約などの条件があるか見てみましょう。

妊娠関連の入院、治療には適応されない場合もありますが、加入した保険の内容によっては補償の対象となる場合があります。

入院に備えて考えておきたいこと

受診の際には、症状をわかりやすく伝えられるように以下の内容をメモしておくと良いでしょう。

問診のときに伝えると良い内容

  • 体重の減少の程度、期間
  • 1日の尿の回数
  • 1日の嘔吐の回数
  • 1日に水分や食事をどのくらい摂れているか
  • 食事や水分が摂れなくなってからの日数

また、入院に備えて以下の内容を家族や周りの人と相談しておきましょう。

入院する病院と部屋の種類

自宅の近くの病院をチェック

妊婦健診を受けているかかりつけの病院が家から遠い場合、ひどい吐き気のなか長時間移動するのは大変つらいものです。

家族の付き添いのサポート状況も踏まえて、近くに入院できる病院がある場合は相談してみましょう。

入院の部屋を選ぶポイント

大部屋は隣の人とおしゃべりができると良い気分転換になりますが、症状がひどいときは他人の生活臭や食事の臭いが刺激になることがあります。

個室は落ち着いた空間で療養ができ、家族も気兼ねなく面会しやすいというメリットがあります。ただし、追加料金がかかるのがデメリットです。

また、治療で吐き気が落ち着くまでの間は、できるだけトイレが備え付けられている部屋か、トイレから近い部屋を希望してみましょう。

仕事の調整について

働いている妊婦さんのなかには、つわりで入院して仕事を休むことが難しいと感じる人もいるでしょう。

しかし、つわりは自分で薬を飲んで治したり、家で休んでいていれば治るというようなものではないということを周りにも理解してもらうことが大切です。

重症妊娠悪阻という医師の診断があると上司や同僚の理解が得やすくなるかもしれません。

病院で適切な治療をすることで体調を整えて仕事に復帰できるようになることや、悪化すると命に関わる状況であることを説明し、しっかり休養できるよう働きかけてみましょう。

入院中の家族の生活について

旦那さんは成人男性ですから、自分のことは自分でできるはずです。普段妻としてがんばっている家事も、つわりがひどい間はお休みしましょう。

上のお子さんがいて、普段は食事や幼稚園の送り迎えなどを妊婦さんが担っている場合、入院前に調整する必要があります。

旦那さんが代わりに分担できるのが一番ですが、ご近所の友だちや、実家の家族など、他にも頼れる人を複数お願いしておくと良いでしょう。

まとめ

つわりの症状は本当につらいものですね。1日がとても長く、先が見えないように感じてしまう人もいるでしょう。でも、つわりは赤ちゃんが宿っている確かな証拠。そして必ず症状が消える日が来ます。

ただし、ただのつわりとして見過ごせないのが重症妊娠悪阻です。時には命に関わることがあるので注意が必要です。

つわりは我慢するもの、と思わずに、つらいときは無理せずに受診しましょう。

妊婦さんと赤ちゃんの命以上に大切なものはありません。周りのサポートを受けながら、つらいつわりを乗り越えてくださいね。

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