赤い着色料の原料コチニールカイガラムシって?その害とは?赤ちゃんが口にして大丈夫?
2017/06/15
コチニールカイガラムシ(エンジムシ)が原料の赤い着色料であるコチニール色素は、2011年にスターバックスのストロベリーフラペチーノやケーキ、ドーナツなどに使われていたということで話題となりました。
現在、スターバックスは、コチニール色素の使用を、「消費者の期待に反していた」などとして、消費者目線に立ち、中止しています。それでは、コチニール色素の安全性については、実際のところはどうなのでしょうか?
コチニール色素の原料は虫ですが、国が使用を認めている食品添加物です。天然由来で国が認めた添加物とはいえ、それを安心して食べられますか?(この記事には虫の画像は出てきません)
今回はコチニールカイガラムシを原料とした、着色料の問題についてご紹介します。
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コチニールカイガラムシから取れる着色料とは?何に使われている?
画像出典元:http://www.colordic.org/colorsample/4215.html
コチニールカイガラムシ(エンジムシ)が原料の着色料には、コチニール色素・カルミンがあります。どちらもコチニールカイガラムシを乾燥させてすりつぶし、水やエタノールで抽出して得られるカルミン酸を主成分とする赤い着色料です。
もともとは、布などを染める着色料として使われていましたが、現在では食料品や飲料、医薬品、医薬部外品、化粧品に使われています。
コチニール色素とカルミンの違い
わかりづらい、コチニール色素とカルミンの違いを見てみましょう。
コチニール色素(天然着色料)
- コチニールカイガラムシから得られるカルミン酸が主成分
- 日本でも食品添加物として指定されている(認められている)
- 主に食料品、飲料に使われている
カルミン(天然由来の合成着色料)
- コチニールカイガラムシから得られるカルミン酸の化合物(不溶化され色調が安定)が主成分
- 日本では食品添加物として今のところ指定されていない(認められていない)
- 医薬品、医薬部外品、化粧品(口紅、チーク、アイシャドウなど)に使われている
その他、コチニール色素やカルミンは、顔料としてインク、絵の具にも使われており、医療品としては、飲み薬や病理検査で使用されています。
このように、コチニール色素とカルミンには、大きな違いとして「日本で食品添加物として認められているかどうか」があります。原料は同じですが、コチニール色素は認められており、カルミンは認められていません。
コチニールカイガラムシの成分から作られる着色料の害とは?
コチニール色素やカルミンの問題は、急性毒性や発ガン性などではありません。ではなにが問題なのかといいますと「エンジムシ(昆虫)から色素を作る際に、取り除ききれなかった不純物(エンジムシのタンパク質)がアレルゲンとなり、アナフィラキシーショックを起こす可能性がある」ということです。
食品及び飲料水中のコチニール抽出物、カルミン類及びカルミン酸はアレルギー誘発の可能性がある。
引用元:第55回 JECFA会議(2000) ー公益財団法人 日本食品化学研究振興財団による既存添加物の安全性評価による
アナフィラキシーショックは、コチニール色素やカルミンだけに限らず、様々な食品などでも起こり得る症状です。蕎麦や小麦などの摂取量の多い食品では症状が出やすく、症例も多いのですが、コチニール色素やカルミンは、着色料としての利用のため、摂取量の少なさからか、症例もわずかです。
コチニール色素は、「虫が原料のもので色付けされているなんて、生理的に受け付けない!」と、感情的に嫌われることが多いのですが、日本国内では、「低アレルゲンコチニール色素」を開発する食品添加物メーカーもあり、ほとんどの人たちにとって安全性の高い着色料です。
しかし、海外では「低アレルゲンコチニール色素」は、あまり開発されていないので、海外製の食品では特に注意が必要です。
気にするべきはメイクアップ商品に使われているカルミン!
- 日本国内において、コチニール色素を含む食品を食べ、アナフィラキシーショックを発症した症例では、全て女性(2011年までに報告)
- カルミンを含む化粧品を長い期間、連日のように使いつづけてしまったことで、体がコチニールカイガラムシのタンパク質(アレルゲン)に対して、敏感な状態(感作された状態)となってしまい、そのことを知らずにコチニール色素を含む食品を食べ、アナフィラキシーショックを発症したという仮説が、海外の文献や専門家の間で有力視されている
カルミンは大手化粧品会社やナチュラルコスメなどでも、メイクアップ商品によく使われている着色料です。製造時にどうしても、コチニールカイガラムシのタンパク質を取り除けない着色料です。
「ナチュラルコスメだったらなんでも安全だ」とは考えず、きちんと内容成分をチェックして購入しましょう。
コチニール色素をふくむ食品とは?「低アレルゲンコチニール色素」とは?
色鮮やかなピンクや赤、オレンジ色をしている加工食品の裏面、原材料の欄を確かめてみてください。以前に比べて減ってきているようですが、まだまだ多くの食品にコチニール色素が使われています。
コチニール色素が使われている代表的な食品
- ハム類
- かまぼこ類
- 菓子類
- たらこ・桜・いちご風味の加工品
最近では食品メーカーも自主的に、コチニール色素のベビー用食品への利用をとりやめているのか、私が今回調べた限りコチニール色素を含むベビー用食品は見かけませんでした。
ご家庭では、小さなお子様や赤ちゃんのための離乳食の材料として、ハムなどの加工食品を利用することもあると思いますので、避けたい場合には原材料表示をきちんと確かめてから購入しましょう。
見落としがちな商品
- 海外製の食品
海外では、カルミンも食品添加物として認められている国も多いため、日本以外で製造された食品では、カルミンが使用されている食品もあります。そのような食品も、日本への輸入や販売は禁止されていません。
しかも、カルミン使用の表示義務がない国もあります。コチニール色素やカルミンの摂取を控えたい方は、念のため、海外製の鮮やかな色の食品の購入は控えましょう。
「低アレルゲンコチニール色素」の普及は?
日本の食品添加物メーカーで、「低アレルゲンコチニール色素」を製造しているところがあるとはいえ、実際の、加工食品への利用普及率はわかりません。
国やメーカーが、「低アレルゲンコチニール色素」の存在をもっと大きくアピールをしないかぎり、私たち消費者は日本の製品であっても、コチニール色素を含む食品のアレルゲン(コチニールカイガラムシのタンパク質)の有無を知ることができません。
こんな試験結果も‥‥
また、「コチニールカイガラムシのタンパク質をほとんど含まないカルミン酸」にも、アレルギー反応を示した試験結果があり、エンジムシのタンパク質だけではなく、複数の原因が存在する可能性も示唆されています。
もし、赤ちゃんにコチニール色素入りの食品を与えてしまったら?
コチニール色素を食べたことによる危険なアレルギー反応は、毎日毎日くりかえし摂取しつづけ(毎日同じものを塗り込んで使うメイクアップ用品など)、身体がコチニール色素に対して敏感な状態になった時に起こります。
ですから「いつもは気をつけていたのに、今回はうっかり与えてしまった!」という程度で、何の症状も出ていないのでしたら慌てなくて大丈夫です。知らずにこれまで与えてしまっていた場合には、今後は原材料表示をよく確認して購入するようにしましょう。
まとめ
赤ちゃんが離乳食を食べるようになると、それまで以上に、食の安全性について考えることが増えているパパママも多いと思います。アレルギー反応はごく一部の限られた人に起こります。これまで知らずに摂っていた人も、慌てることなく冷静に、このことを知っておいてください。
また、もしアナフィラキシーとみられる症状が起きた時には、急いで医療機関へ受診し「食品や化粧品などに含まれている着色料のコチニール色素、カルミンも、アレルゲンとなり得る」ということを思い出し、医師へ伝えましょう。