こんにちは赤ちゃん事業って?産後の家庭訪問についての疑問におこたえします♪
2017/05/02
特に初めてのお子さんの場合、赤ちゃんが産まれてみてどう感じましたか?私は、出産前、すやすや眠る赤ちゃんを抱いてほほえむ自分を想像していました。
でもそれは大きな間違いでした。いつも泣いてばかりで寝てくれない赤ちゃんを抱っこしながら、一日パジャマ姿。寝不足で疲れきった私がいました。
産後の体で、慣れない育児をするのは重労働です。みんな初めからテキパキ上手にこなせるわけではありません。それぞれの、または似たような悩みがあります。行政の積極的な支援によって、大変な思いをしている親子をサポートしようとするのが「こんにちは赤ちゃん事業」です。
このページでは、こんにちは赤ちゃん事業についてまずわかりやすくご説明します。そして、疑問を感じるであろうポイントについてこたえていきます。
このページの目次
こんにちは赤ちゃん事業とは?
「こんにちは赤ちゃん事業」の正式名称は、「乳児家庭全戸(ぜんこ)訪問事業」といいます。「日本全国で生まれた、すべての赤ちゃんの家庭訪問プロジェクト」といえばわかりやすいでしょう。
厚生労働省が創設、主体は各自治体
厚生労働省により2007年4月「生後4か月までの全戸訪問事業(こんにちは赤ちゃん事業)」がはじまりました。そのあと、「乳児家庭全戸訪問事業」という名前になり、各区市町村に努力義務が課せられました。そして、自治体が主体となり2009年4月から実施されています。
どうしてそんな大がかりなことをするのでしょう?。それは、孤立し何らかの問題を抱えた親子が増えているからです。昔のように3世代以上が同居する世帯が減り、核家族化が進んでいる現代です。
赤ちゃんが産まれても周りからの援助が受けにくいので、そこに行政がかかわり、必要な助けの手を差し出そうとしているのです。
事業の目的
生後4か月までの乳児のいるすべての家庭を訪問し、様々な不安や悩みを聞き、子育て支援に関する情報提供等を行うとともに、親子の心身の状況や養育環境等の把握や助言を行い、支援が必要な家庭に対しては適切なサービス提供につなげる。このようにして、乳児のいる家庭と地域社会をつなぐ最初の機会とすることにより、乳児家庭の孤立化を防ぎ、乳児の健全な育成環境の確保を図るものである。
引用元:厚生労働省HP「乳児家庭全戸訪問事業(こんにちは赤ちゃん事業)の概要」http://www.mhlw.go.jp/bunya/kodomo/kosodate12/01.html
家庭訪問で、何をするの?
家庭訪問に来てくれるスタッフは、具体的にどのようなサポートをしてくれるのでしょうか。基本的には、相談業務です。
家庭訪問時のサポート内容とは?
- 育児の不安な悩みをきいて、必要な相談にのる
- 自治体の子育て支援サービスについて、ためになる情報を教える
- 親子の心身の状況や家庭環境を把握し、アドバイスをする
- 支援が必要な家庭に対しては、適切な支援を行えるように行政に働きかける(具体的な行政サービスにつなげるかどうかの見極め)
参考:厚生労働省HP「乳児家庭全戸訪問事業ガイドライン」
ちなみに、訪問者が「要支援」と判断した場合はどうなるのでしょう?その詳細が自治体に報告されます。専門家や関係者が集まって話し合い、適切なサービスが決められます。そして、対象の親子に相談しながら、具体的なサポートが進められていきます。
いつも通りで大丈夫
「産後の来客は迷惑」という印象が強い人がいるかもしれませんが、家庭訪問には意味があります。
家庭訪問の意味
- 実際に親子が過ごしている自宅で、生活の様子がよくわかる
- 母子の悩みが、訪問者にとってわかりやすくなる
- まだ小さい赤ちゃんを外出させずに済み、母子の体の負担を減らせる
- 普段の親子の生活のリズムの中にいるので、母子が落ち着いた状態で話せる
抜き打ちチェックしに、予告なく突然あらわれるわけではありません。前もって電話で訪問日時を打ち合わせしてから、来てくれるケースがほとんどです。ママも悩みや不安を落ち着いて話しやすい雰囲気になるでしょう。気をつかって掃除を頑張らなくても、いつもどおりで大丈夫です。
どんな人が来てくれるの?
訪問してくれるのは、どのような人でしょうか?厚生労働省のガイドラインによると、「愛育班員、母子保健推進員、児童委員、子育て経験者等を幅広く登用する」とあります。実際には、看護系の有資格者(助産師・保健師・看護師)が多いです。
看護系の有資格者(助産師・保健師・看護師)が多数
自治体ごとに、訪問者の編成はさまざまです。厚生労働省研究班「乳児家庭全戸訪問事業における訪問拒否等対応困難事例への対応の手引き」によると、以下の割合となっています。
看護系の有資格者のみが訪問する自治体 | 62.2% |
看護系の有資格者以外のみが訪問する自治体 | 9.3% |
看護系の資格者とそれ以外の人の混成で訪問する自治体 | 28.5% |
※「看護系の有資格者以外」には、ソーシャルワーカーだけでなく臨床心理士や幼稚園教諭、歯科衛生士など医療・教育分野での有資格者も含む。
いくら専門職でも、自分にとって話しやすい人かどうかは、会って話してみないとわかりません。でも、あらかじめどんな人が来てくれるのかを確認しておくと安心です。
自治体のホームページや、母子手帳配布時にもらう資料をチェックしましょう。記載がない場合は、自治体に電話やメールで問い合わせてみましょう。
専門職以外の訪問者はどんな人?
- 保健推進員
- 民生委員
- 一般の子育て経験者
- そのほか(自治体によって様々)
保健推進員や民生委員は、自治会からの推薦で地域のための奉仕業務にあたっているソーシャルワーカーです。これらのソーシャルワーカーや一般人が、必要な講習を受けたうえで、訪問員として派遣されてくることもあります。
専門職の場合は室内で長時間の相談、ソーシャルワーカーの場合は玄関先で短時間の立ち話程度、という全国的な傾向があります。とくにソーシャルワーカーの訪問の場合、ただの世間話になってしまいがちです。
話し相手になってもらえて気分転換になったというママもいるし、逆に時間の無駄と感じたママもいます。
家庭訪問が行われる手順
こんにちは赤ちゃん事業の家庭訪問は、どのような手順で行われているのでしょうか。実際にママたちは、どのような手続きをすることになるのでしょう。
はじめての説明は、母子手帳配布時。役所の窓口で
まず母子手帳配布時に、役所の窓口で、ママは産後の家庭訪問についての説明を受けます。自治体ごとに異なりますが、大まかには、制度についてわかってもらうための内容です。
ママたちに訪問についての理解をもとめ、あらぬ誤解やトラブルを避ける自治体のこころみは、年々活発になっています。例えば、訪問時の電話連絡のために、個人情報提供の同意書へのサインを求めてくる自治体が増えています。
出産後に申請をする
次の段階は、出産後に出生届を出すときです。ママは、文書あるいは電子申請で訪問の申し込みをするようにうながされます(申請の方法は自治体によって違います)。
ここでは、出産後の母子の体調不良や里帰りについてのアンケートも一緒に行います。
ここで自治体は、特殊な事情で入院が長引く場合は母子のケアを病院にゆだね、里帰りが長い場合には訪問時期をずらすこともあります。また、ママの連絡先に変更がないかを確認し、実際の家庭訪問につなげる最終的な調整をします。
こんにちは赤ちゃん事業の実情
乳児のいるすべての家庭を訪問しようという「こんにちは赤ちゃん事業」ですが、実際、すべての家庭を訪問できてはいません。家庭訪問の実施状況について、みてみましょう。
訪問は義務?
家庭訪問は強制ではありません。ですから、義務でもないし、受けないことによる不利益はとくにありません。でも、原則として全員が訪問を受けることになってはいます。
サービスを提供する側は、訪問を受けることによるメリット(「最近の予防接種の制度変更」「自治体の事業」について最新の情報を届けます、など)を伝えて、なんとか訪問を受けてくれるように説得することでしょう。
家庭訪問を断っている人はいるの?
出産後で、心身ともにデリケートなママです。たとえ同意書にサインをしても、産後にはすっかりそのことを忘れていて、着信拒否や連絡がつかないケースがあります。また、多忙なことや育児について知識があること、または何らかの事情を理由に断っている人もいます。
訪問拒否するママはいるけれど、ごくわずか
産後うつや乳児虐待のニュースを聞くと心が痛く、なんとかならないものかと思います。でも、行政サービスとしてすべての赤ちゃんを訪問することは決して簡単ではありません。
親切心からの訪問であっても、中には「押しつけ」や「余計なお世話」と受け取られてしまい、電話のやり取りも上手くいかない例があります。
平成24年度のアンケート結果によると、訪問拒否の件数は、0~1%の区市町村がほとんどです。この中には、言葉の壁があるかもしれない(日本に居住している)外国人も含まれます。筆者は思ったより少ないと感じましたが、いかかでしょうか?
全国の市区町村に対して郵送で質問紙調査「乳児家庭全戸訪問事業の実施状況に関する全国調査」 を実施するとともに、 選定した自治体について事業担当者あるいは訪問担当者への聞き取り調査を実施した。質問紙調査の回答の回収率は70. 5%であった。本事業を実施している自治体は1090(実施率は88. 0%)であった。22年度の実績で、訪問拒否等、 専門職が対応しても対応が困難事例については、 763(70. 0%)の自治体が具体的に回答し、訪間実件数100件当たり0 とする自治体が659 ( 86.4%)であった。1以下の自治体が80(10. 5%)であったが、中には16という自治体もあった。 対応に苦慮している点をたずねたところ、 どうしても連絡が取れないという段階から、 明白に面接や指導を拒絶する段階まで、 対応に苦慮する状況にも幅があるためと考えられる。
引用元:平成 24年度 「乳児家庭全戸訪問事業 (こんにちは赤ちゃん事業) における訪問拒否等対応困難事例への支援体制に関する研究」総合研究報告書http://www.aiiku.or.jp/~doc/houkoku/h24/19010B010.pdf
家庭訪問できなかったときはどうなるの?
まず、自治体の会議で、訪問できなかった赤ちゃんの名前がすべて報告されます。もちろん理由や状況はさまざまです。個別の事情にもふれて、これからどのように連絡を取って見守っていったらよいか、虐待が疑われるような深刻なケースがないかについても話し合われます。
自治体は、何らかの問題を抱えている親子がいないかを探します。どうしても訪問できなかった母子については、保健センターで行われる3-4か月健診の問診で様子をみます。
こんなときどうする?
家庭訪問を受けるときにありがちな、ちょっとした疑問におこたえします。
お茶菓子は準備する?
訪問者は、立場上「お客さまではない」という姿勢で訪問します。お茶菓子を準備しても、手をつけてくれない場合がほとんどです。派遣元からそのような指導を受けているのでしょう。筆者の場合は、夏の訪問でした。冷たい麦茶だけ準備しましたが、遠慮がちで、お勧めしたら帰り際にようやく飲んでくださいました。
もし自分にとって負担になるならば、お菓子少々、お茶一杯を準備しなくてもまったく失礼にはあたりません。もしそのときに自分に余裕があれば、来てくださる方への心遣いとして、飲み物だけお出しすればよいです。それだけで、気持ちは伝わるでしょう。
夫や母が家にいる場合、一緒に聞いてもよい?
特に、母子のみという限定はありません。わざわざその時間に家族を外出させて、家庭訪問を受けなくても大丈夫です。筆者も、第一子の家庭訪問の際は母と一緒に訪問を受けました。現代の子育て事情を聞けて、母もとてもためになったそうです。
嫁姑ストレス対策に
たとえば、義母や実母と同居の場合、昔の価値観で育児に口を出されてストレスを感じているママもいるでしょう。助産師や保健師が訪問してくれる場合は、来訪日時を決めるとき、姑問題で悩んでいることをそれとなく伝えておきましょう。
あえてリビングで一緒に家で話を聞いてもらって、専門家から現代の育児についてアドバイスをもらうと、ママの気持ちもすっきりするでしょう。誰にも邪魔されず母子のみで相談に乗ってほしい場合は、寝室などで話すことにも対応してくれます。
自分にとって、話すのにより気楽な環境をセッティングしてください。
早く帰ってほしい
「久しぶりのお客さんで疲れたので、少し休みたいです」「すみませんが〇時から用事があるので、それまでならお話しできます」など、自分の気持ちを丁寧にはっきり伝えましょう。チェック事項が済んでいれば、訪問者も長居の必要はないはずです。母子を気遣い、話し足りないことがないかと待機しているだけかもしれません。
筆者が第二子のとき来てくださった保健師さんが、マスクをして咳込んでいました。お仕事だから大変とは思いながらも、私も産後で神経質になっていました。一通りの質疑を終えたあと、早目に切り上げて帰っていただきました。
訪問を断りたい
「二人目、三人目育児だから」「自分が助産師なので」など、自分の育児経験を理由に家庭訪問を遠慮するママもいます。訪問者がソーシャルワーカーの場合、訪問を不要と感じる人がさらに増えるでしょう。
役所の人や訪問者は、全員が訪問を受けることを強調し、説得をこころみてくることでしょう。まずは、どうして訪問が不要なのか理由を伝え、納得がいく解決策はないか話しあってみましょう。
断ろうか迷っている人は、なるべく産前にお話ししておくのがおススメです。出産後は予想以上にあわただしい毎日が待っています。
役所窓口での「訪問拒否」実体験
当時の筆者は「2人目、3人目で育児経験があるから」「上の子のこともあって日中忙しいので」「行政と自分の両方にとって、お金と時間の無駄」と、保健師の家庭訪問を最初は断りました。
窓口の人は、丁寧に「第二子ゆえの悩みもありますから。」「この制度は、希望者のみではなく、全員が受けることになっているんですよ」とわかりやすく説明してくれました。面倒がらずに、遠慮せずに、差し出されたものはありがたく受け取ろうという気持ちに変わり、訪問を受けることにしました。
まとめ
こんにちは赤ちゃん事業について、自治体によってやり方はさまざまです。あたたかい雰囲気の中でやりたい訪問事業でしょうが、なにしろ対象者が多いので問題もたくさんあるのは当然ですよね。でも、もれなく受けられるサービスなので、上手に活用することをおススメします。
訪問を受けたら、いろいろな感想が出てくるでしょう。とくに「これはありがたかった」「これはいらない」「これはこうしたほうがよい」という具体的な声がもしあれば、自治体に直接フィードバックしましょう。まだ、はじまって10年もたっていないプロジェクトですから、今後の大きな力になるはずです。