赤ちゃんの皮膚に赤いふくらみがでてきた!苺状血管腫って何?治療はできるもの?
2017/11/16
産まれてすぐはなかったのに、気づけば苺の様にぼこぼこと膨らんだコブが赤ちゃんの顔や体に現れることがあります。あまりの赤さ、膨らみにパパやママは「病気ではないか?」と心配になりますよね。
これはその見た目の通り「苺状血管腫」という腫瘍です。小さな体にとても目立ってしまうので赤ちゃんでも治療ができるのか、痕は残らないのかなど経過が気になりますね。ここでは「苺状血管腫」の原因や治療法、経過について調べてみました
このページの目次
血管腫ってなあに?
血管腫は皮膚や皮下の血管が増えたり、広がったりして起こります。別名『赤あざ』のことです。日本人は赤ちゃん全体の0.8~1割位の頻度で発生します。日本人は赤あざより青あざ(蒙古斑など)が出る方が多いです。
血管腫の原因は胎児期の血管細胞が何らかの原因で残り、それが生まれてから増殖したことで発生すると考えられています。しかし、増殖してしまう原因はまだはっきりとはしていません。
苺状血管腫の種類
苺状血管腫はその名の通り、血管腫の表面が苺の様に赤くボコボコしています。大きさは小さければ1cm程から顔の半分を覆ってしまうほど広範囲など様々です。首から上、顔や頭に出ることが多いですが、内臓を含め体のどこにでも出てくる可能性があります。
この血管腫は悪性ではありません。1歳位までに大きくなり、2歳頃から減退、多くは就学年齢位で自然に治ってきます。苺状血管腫の6割は軽度の血管腫です。ですが、血管腫ができた場所や大きさによっては治療をした方がよい場合もあります。(詳しくは後程説明します)
通常は半年から一年ぐらい経つと成長が止まり、6~7歳ぐらいまでには約80%の人で自然消退するとされています。
苺状血管腫は毛細血管の増殖する場所で大きく3つに分かれます。
局面型苺状血管腫
皮膚の表面で増殖。赤あざが目立つ。苺状血管腫の中では1番多い
腫瘤型苺状血管腫
皮膚の表面と皮下両方で増殖。赤く隆起してくる。コブが残りやすい。苺状血管腫の3割程度がこの腫瘤型。
皮下型苺状血管腫
皮下の深い所で増殖し腫瘤を作る。透けて青いシミに見える。皮膚の表面に見えず分かりにくいうえ、海綿状血管腫と間違えやすい
海綿状血管腫とは
苺状血管腫の原因と異なり、奇形の静脈が絡まって塊になり皮下にコブのような血管腫を作ります。小さく症状がなければ特に治療はしません
苺状血管腫に気付いたらどうすればいい?
膨らんできたあざを見てショックを受けたり、妊娠中の生活や健康状態が原因ではないか?などと責任を感じてしまうママもいると思いますが、妊娠中の健康状態は関係ありません。前述の通り自然に治ってくる場合が多いので気付いた時にまずは医師に相談しましょう。
小児科の先生にも相談は可能ですが、専門は皮膚科になります。かかりつけの皮膚科があればそちらの先生に相談するのがよいですね。近々検診が予定されているような場合は、まずは検診の場で相談してもOKですよ。
膨らみが大きい場合は皮膚がたるんでくることがあります。まぶた、耳、鼻、口などの器官の近くであれば視力、聴力、呼吸、摂食に支障がでる可能性があるので、治療をする流れになります。頭皮にできた大きなものも治療対象となることがあります。
また、多数見られる場合は内臓への合併も考慮し、精査が必要になるケースもあります。どのような場合でも早期に受診し、医師と相談することは治癒後の状態をよりよくするために大切になってきます。
苺状血管腫 治療方法と経過
苺状血管腫の診断をうけ、経過観察で良い場合の経過、要治療となった場合の治療方法について調べてみました。経過観察で過ごした体験談も紹介します。
苺状血管腫の検査について
苺状血管腫について医療機関を受診した場合次の様なことが問診され、検査に進みます。赤ちゃんの血管腫の様子をメモに控えて受診することをおすすめします。
問診
- 症状が現れた時期(いつから膨らみ始めたか?など)
- 出血があるか
- できている場所は1つなのか複数あるのか
- 子供が触ってしまうか
検査
- 色や膨らみの状態、形、出血の有無を診る
- 膨らみの固さや脈などを触診
- 皮膚の深部にあったり、内臓病変の可能性があれば、画像診断(超音波、MRI)
- 他の血管腫の疑いがあれば、病変を採取し病理検査をしたり血液検査をする
経過観察をする場合
苺状血管腫の治療大原則はwait and seeと言って、自然治癒を待ちます。ですから経過観察と診断される方が多くなります。2歳頃から減退傾向になり、ゆっくり退縮しながら7歳位までに自然消退することがほとんどです。
【監修】
地方独立行政法人 神奈川県立病院機構 神奈川県立こども医療センター
皮膚科部長 馬場 直子 先生
全く痕が残らないかと言えば、そうではありません。色が薄くなり目立たなくなりますが、シワになったり、皮膚が凸凹するなど傷跡の様に残ってしまうことも多いです。
観察中の注意
- 血管がかたまっている場所なので傷つきやすいため触らない
- 出血があった場合は血が止まりにくく止血に時間がかかる(ガーゼなどでしばらく圧迫しておく)
- 子供の年齢が低いので絆創膏で患部を覆うなど刺激しない工夫が必要
- 医師の指示を仰ぎながら経過観察をする
経過観察で過ごした体験談
体験談1
現在5歳の女の子です。産まれてしばらくして指の水かきの部分に赤い斑点を見つけました。3か月位で手の甲近くまでの赤いあざに広がりました。3か月検診にて「左手血管腫」と言われ、母子手帳に記載があります。
膨らみはなく平坦な赤いあざでした。泣くと色が濃くなりました。2歳過ぎから手も大きくなってきたこともあり、あざが目立たなくなりました。掻かないように気をつけていましたが検診毎に相談する位でした。
現在5歳ですが、ほとんど見えません。場所が分かるので、指を開いてみれば発見した時のような赤い斑点が少し見える程度です。
体験談2
30代の子育て中のママです。赤ちゃんの頃の写真はどこにいてもすぐに見つけられる位の赤い腫瘤がおでこにありました。母の話では見事な苺だったそうです。かかりつけ医の診断で経過観察をすることになり、10歳位で消えるよと言われたそうです。
幼稚園の頃の写真では膨らみは見えませんが、赤みが残っていたので「ぶつけたの?」とよく聞かれた思い出があります。赤みは完全に消えませんでした。現在も血管腫があった場所はシワになって軽く凹んでいるのと、周りの皮膚に比べ赤みがあるので分かります。
赤みはファンデーションで隠せる程度です。
治療が必要になった場合
まぶた、耳、鼻、口付近にできていたり、巨大なものなど機能障害の可能性がある場合や、血管腫の痕が皮膚に残る場合などで治療の必要がでてきます。男児より女児に多く、顔面が好発部位であることから見た目的に治療を希望する方もあります。
下記は治療が必要になった場合、選択されやすい治療方法です。できるだけ痕が残らないように治療方法が併用されることもあります。もちろん乳児から治療は受けられます。ただし薬の副作用が出ないかなど治療に注意が必要ですので入院が必要なケースが多いです。
血管腫の大きさ数、場所、赤ちゃんの様子など様々な要素を踏まえ治療方法は判断されますので、主治医としっかり相談して決めていきます。
色素レーザー治療
レーザー光をあて、特定の色調の細胞を破壊します。血管腫治療ではよく選択される治療方法です。治療の流れとしては以下の通りです。
- 治療1~2時間前に麻酔シールを貼る
- レーザー照射し軽いやけど状態にする
- 外用薬を塗って後処理をする(1週間位)
- 3か月に1回~1,2か月に1回照射を3~6クール繰り返す
場所によって(目や鼻、口など器官の側や生え際など)は慎重にすすめなくてはならないので時間がかかることもあります。この治療の目的は、早く退色させたり、増大を防ぐことです。保険が適応されているため、レーザー設備のある病院ではこの治療方法が採用されることが多いです。
注意点
- 生後6か月位の増殖期の場合に行っても増殖が止められない
- 患部に照射するとは言え、繰り返しの治療により周りの皮膚にダメージが残り色素沈着の可能性もある
- 照射時、痛みを感じる
ステロイド内服・ステロイド局所注射
治療方法としては速効性があります。巨大なもので呼吸や摂食に支障をきたすような緊急を要する場合に有効です。
注意点
- ステロイド局所注射は痛みを伴うため、乳児顔面であった場合全身麻酔の必要あり
- ステロイド内服による副作用の心配。
経験の豊富な医師のきちんとした管理の元治療をすすめる必要があります。
凍結療法
患部を液体窒素(-196℃)で凍結させる治療方法です。液体窒素をスプレーしたり、綿球につけて患部にあてることで増殖した毛細血管を壊死させます。
注意点
- 痛みを感じる
- レーザー同様皮膚がダメージを受け色素沈着する可能性がある
新しい治療方法
ヘマンジオルシロップ内服療法
このお薬は2016年から発売されている新しい乳児血管腫用の内服薬になります。主成分のプロプラノロールは「血圧を下げる、脈拍数を低下させる」作用があります。心臓疾患の治療に使われています。
元から苺状血管腫の薬であったわけではなく偶然にその効果が発見されました。心臓疾患と苺状血管腫を患っていた小児にこのプロプラノロールを投与した結果、血管腫に改善がみられた症例がフランスで報告され(2008年)以来血管腫への効果に注目が集まりました。
とは言えまだこのメカニズムは明確になっていないのが現状です。しかし乳幼児の体の負担になるレーザーや手術以外の治療方法として現在運用が始まっている新しい治療方法です。今後さらに注目され、広まっていく治療方法になっていくでしょう。
プロプラノロールという飲み薬があります。昔からある薬です。2008年にフランスではじまった治療だそうです。乳幼児の血管腫には、このプロプラノロールが効く例があります。効かない例には、レーザーとの併用が効果的だそうです。
■ ■
すべての血管腫・血管奇形に効果があるのではないようですが、これからの治療として第一選択になると思います。
まとめ
苺状血管腫は良性の腫瘍ですが、できた場所によって治療が必要になることが分かりました。血管腫の様子は個人個人違い、治療方針もケースバイケースです。体への負担や薬の副作用など不安に感じることは主治医としっかり話合うことが大切です。
経過観察となっても刺激しないよう日々の生活に注意する必要があります。ほとんど自然消失していきますが、普段の観察をしっかり続け急な変化が出てきた時は速やかに医師に相談してくださいね。