GBS感染症ってなに?原因・症状は?出産時の点滴はなんのため?
2017/12/16
妊娠中には血液検査や性病検査など様々な検査を行い、母子共に何らかの病気や異常がないかを定期的に検査します。
その中に「GBS感染症」という検査項目があるのをご存知でしょうか。
日頃あまり聞きなれない名前ですので何を調べているのか詳しく知らないという方も多いでしょう。
今回は妊娠中に気をつけなければならない「GBS感染症」について詳しく説明していきます。
このページの目次
GBS感染症ってなに?感染経路・原因は?
GBS感染症とは膣内や肛門付近に常在するB群レンサ球菌という細菌によって感染する病気のことです。
約10%〜15%の妊婦さんが保菌していますが、この菌自体はとても弱い菌なので母体には得に大きな影響を与えることはありませんし自覚症状もないでしょう。
しかし出産時に膣内や産道にこの菌が存在していると赤ちゃんに感染してしまい、最悪の場合には死にいたってしまうこともあるのです。
感染率は約40%近くになりますが、感染しても全ての赤ちゃんが発症するというわけではなく100人〜250人に1人と発症率は低いです。
新生児感染症を起こす確率は、GBSを保菌している妊婦からの生まれた児の200人に1人とごく少数ですが、予後が悪い場合は新生児死亡や後遺症を残すことがあります。
わが国では1年で500~600例発症し、そのうち死亡14%、後遺症25%とされています。
引用元:GBS(鈴峰今中医院)
GBSの検査方法
GBSに感染しているかどうかを検査する方法としては妊娠後期の33週〜37週の間に膣内や直腸、肛門付近を綿棒の様な物で擦り培養して菌がいないかを確認をします。
検査結果は約1週間ほどで分かるでしょう。
万が一結果が陽性だったとしても赤ちゃんは産道を通るまでは卵膜で包まれており、その間は感染することはありませんので心配いりません。
GBSが新生児に与える影響3つ!どんな症状・後遺症がある?
もし出産時に産道にGBSが存在し赤ちゃんに感染してしまった場合には新生児GBS感染症と呼ばれる合併症を引き起こします。
感染してしまった場合の発症率は低いと言われていますが、様々なリスクがあります。
ではもし新生児GBS感染症になってしまった場合にはどの様な症状が起こるのでしょうか。
またそれらによって後遺症はあるのでしょうか。
1.敗血症 (はいけつしょう)
GBS感染症の中でも一番重篤になりやすい敗血症ですが、血液中に細菌が入り込んでしまい感染してしまいます。
敗血症に見られる症状は多くありますが、感染が疑われる場合には早急に検査をしなるべく早く対処することが必要となります。
敗血症の症状
- 無呼吸
- 嘔吐
- 下痢
- 哺乳力低下
- 痙攣
- 黄疸
2.髄膜炎(ずいまくえん)
敗血症に次いで発症率が高いのが髄膜炎です。
脳や脊髄周辺の髄液の中に細菌が入り込み感染してしまいます。
髄膜炎の恐ろしいところは髄液中に細菌が蔓延してしまうと様々な脳障害を引き起こしたり脳が浮腫んでしまう点です。
その為最悪の場合には死に至ってしまうこともあり、もし助かったとしても重度の後遺症が残ってしまいます。
髄膜炎の症状
- 呼吸不全
- 体温異常
- 嘔吐
- 痙攣
- 哺乳力低下
髄膜炎の後遺症
- 癲癇(てんかん)
- 難聴
- 知能や精神発達の遅れ
- 脳性麻痺
3.肺炎
赤ちゃんが産道を通る際に鼻や口から細菌が入り肺に炎症を起こしてしまうことがあります。
生後1週間以上経ってからの発症の場合には肺炎になることは少ないと言われていますが、もし新生児が肺炎になってしまった場合には重症化する恐れがありますので注意が必要です。
肺炎の症状
- 呼吸が早い
- チアノーゼが見られる(顔や手足の色が紫色になる)
- 低体温である(36.0度以下である)
- 唸る様な声を出す
また上記の様な病状の他に関節炎や筋膜炎、目や耳や鼻に炎症が生じる場合があります。
GBSの治療法は?点滴はいつするの?
いくら弱い菌で発症率が低いと言われていてもGBSの検査を受けた時に陽性と結果が出ると心配になりますし不安ですよね。
しかし出産時に産道や膣内に菌がいなければ赤ちゃんに関する確立は低くなる様ですので、それまでに治療をしておくと良いでしょう。
ではGBS検査で陽性だった場合の治療はどの様に行うのでしょうか。
治療と感染予防ができるのは分娩時の点滴のみ!
GBSが陽性と診断された場合には陣痛が始まってから赤ちゃんの娩出が終わるまで数時間ごとに抗生物質の点滴を行う事によって、高い割合で赤ちゃんへの感染が防げると言われています。
この点滴は妊娠中に行ってもあまり効果が得られません。また、点滴の抗生物質は投薬後約2時間で効き目が現れます。
ですので、分娩中で尚且つ遅くても分娩が始まる2時間前までに投薬を開始しなければなりません。
抗生物質は主にペニシリン系が使用されるそうですが、アレルギーがある場合には違う抗生物質が使用されます。
しかし点滴を行ってもお母さんが保持している菌の量や赤ちゃんの抵抗力等に個人差がありますので、100%の確率で感染を防げるわけではありません。
ですので事前の検査で陽性だった場合には得に出産後の赤ちゃんの様子に注意しておく必要があるでしょう。
こんな方は赤ちゃんの様子に注意が必要です!
- 前回の分娩時に陽性反応が出た方
- 妊娠中に1度でも陽性反応が出た方
GBSはその日の体調等によっても自然に増減します。妊娠中に陽性であった場合でも分娩時には陰性になっている場合もあります。
しかしお母さんが保菌している事には変わりありませんので、赤ちゃんが感染し発症してしまう場合もあるでしょう。
上記でも紹介した嘔吐や体温異常、哺乳力低下等の症状が赤ちゃんに見られる場合には少しでも早く病院を受診するようにしましょう。
いつまで注意が必要??
GBS感染症には大きく分けて「早発型感染」と「遅発型感染」の2種類があります。
早発型感染・・・生後6日以内に発症
遅発型感染・・・生後7日以降から89日までに発症
早発型感染の方が重症になりやすく、特に生後24時間以内に発症すると命の危険性が高まります。
参考資料:B群溶血性レンサ球菌(GBS)
GBSは予防できる?
少しでも赤ちゃんに感染するリスクがあるのであれば事前に予防しておきたいですよね。
しかし残念な事に今の所は事前にGBSに感染しない様に予防する方法はありません。
冒頭でも説明しましたがこの細菌は妊婦さんの約1割の方が常在菌として保菌しており、得に問題がないからです。
ただし赤ちゃんへの感染はリスクを伴いますので妊婦健診できちんと検査をしておく必要があります。
もし陽性だった場合でも分娩中に感染予防が出来ますので、まずは自分自身がGBSを保菌しているのかどうかを知る事が大切になります。
まとめ
あまり聞きなれていないGBS感染症という名前ですが、実は赤ちゃんに感染してしまうと様々なリスクがある怖い病気です。
事前に予防する事が中々できませんので妊婦健診できちんと調べておくことが大切になります。
もし陽性だった場合には分娩中に母子感染を予防する点滴が処置されますが、100%感染を防げるという訳ではありませんので産後の赤ちゃんの様子を注意深く見ておきましょう。