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カンガルーケアとは?得られる効果と危険性

      2016/05/28

赤ちゃんとお母さんが直肌で触れ合う「カンガルーケア」。長い間お腹の中にいた赤ちゃんと、やっとのことで対面できる時間なので、「素敵な時間」「幸せを実感する時」というイメージを抱く方が多いのではないでしょうか。

でも、「カンガルーケア」には危険な側面もあるのです

こちらでは「カンガルーケア」を行うにあたって、妊婦さんに知っておいていただきたいことをまとめています。

カンガルーケアとは?

カンガルーケアとは?

もともとは、南米コロンビアのボゴタという町で保育器の不足を補うための対策としたことで、世界中に広まったカンガルーケア。

日本ではどのように行われているのでしょうか?

カンガルーケアには種類があります

一言でカンガルーケアと言っても、赤ちゃんの状況によりその方法が異なります。

まずはカンガルーケアの種類を簡単にまとめてみます。

カンガルーケアの3つの種類

  1. 集中治療下にある赤ちゃんにおこなうもの
  2. 低体重で産まれたが、状態が落ち着いている赤ちゃんにおこなうもの
  3. 正期産の(早産ではない)赤ちゃんに対して出生直後におこなうもの

こちらでは、3つめの「正期産の赤ちゃんに対して出生直後におこなう」カンガルーケアについて解説していきます。

カンガルーケアってどのような状態になるの?

産院によって異なる部分はありますが、出産後すぐに分娩台の上などで行います。お母さんは前開きの服の上半身を開けた状態、赤ちゃんは呼吸などの健康状態をチェックされてから裸のままで行います。

赤ちゃんをお母さんの胸の上に置き、赤ちゃんの体温が下がらないように上から掛けものをします。このような状態で、医療スタッフの管理のもと母子の時間を過ごします。

カンガルーケアさせてもらえる時間は?

ほんの数分~2時間ほどまで、産院によってかなりの差があります。また、出産直後は母子ともに不安定な状況です。医療スタッフによるケアが欠かせないため、お産の混み具合によっては短時間しか行えないこともあります

だた、カンガルーケアのガイドライン(新生児医療に携わる医師などによるワーキンググループが作成)によると、「出生後できるだけ早期にできるだけ長く」することが進められています。

注釈には下記のようにあるので、かなり長い時間行うことで、効果が得られやすくなります。

「出生後30分以内から、出生後少なくとも最初の2時間、または最初の授乳が終わるまで、カンガルーケアを続ける支援をすることが望まれます」

出典元:出生直後におこなう「カンガルーケア」について

帝王切開でもカンガルーケアさせてもらえる?

お母さんと赤ちゃんの状態次第では、帝王切開でもカンガルーケアが可能です

その場合は、切開した下腹部を縫合している間に赤ちゃんをお母さんの胸元に置くような形をとる、などの方法があります。

ただし、麻酔の効き方や病院の方針によります。「帝王切開だから…」とあきらめずに、まずは担当の医師に希望を伝えてみましょう

カンガルーケアした人の感想は?

出産の状況も人それぞれなので、感動したという声もあれば、辛かったという声も…。

カンガルーケアの感想

  • 赤ちゃんの重みと温かさに、感動して涙があふれた
  • 出産で疲れ切ってしまい、赤ちゃんを落とさず抱いているのが辛かった
  • 自分のことで精いっぱい、感動に浸る余裕がなかった

ではカンガルーケアにはどんな効果があるのでしょうか?

カンガルーケアの効果

カンガルーケアは、南米コロンビアから保育器の不足を補う対策が注目されたのをきっかけに、世界へ広まったことは先述しました。

でも、日本では保育器が不足している訳ではありませんよね?整った環境で元気に産まれた赤ちゃんとお母さんに対して、カンガルーケアはどのような効果があるのでしょうか。

具体的にまとめてみます。

赤ちゃんが早く環境に慣れることができる

産まれたばかりの赤ちゃんは、お母さんから引き離された不安や環境の激変に大きなストレスを感じています。

カンガルーケアを行うと、そうでない場合と比べて赤ちゃんは早くに泣きやみます

また、体温や血糖値が安定するのも早く分娩時の低酸素も早くに改善されることが研究で分かっています。

母乳育児が楽になる

カンガルーケアをすることで、その後の母乳率が向上し、母乳をあげる期間も長くなることが確認されています。

ただし、この効果を出すためには、カンガルーケアの中で赤ちゃんに乳首を吸わせることがポイントです。

母乳がスムーズに出るようになるために、出産後できるだけ早く赤ちゃんに乳首を吸わせることが望ましいとされているためです。

ちなみに、WHOとユニセフによる「母乳育児を成功のための10カ条」には

母親が分娩後、30分以内に母乳を飲ませられるように援助すること

出典元:母乳育児成功のための10ヵ条

とあります。かなり早い段階での授乳を心掛けたほうがよさそうですね。

赤ちゃんへの愛情が深まる

カンガルーケアを行ったお母さんは、授乳中赤ちゃんへの愛着行動(優しく触れるなど)の回数が増えるという研究結果もあります。

南米コロンビアのケースでも、育児放棄が減ったという報告がされているので、その後の育児をよりよくするために役立つことが考えられます。

カンガルーケアのデメリットとリスク

カンガルーケアのデメリット

ここまで、カンガルーケアの良い面ばかりを取り上げましたが、注意しなくてはならない点もあります。

基本となるのは、「出産直後の赤ちゃんは、非常に不安定な状態である」という事実です。

この点を踏まえておかないと、カンガルーケアが悔やんでも悔やみきれない事故を招いてしまうかもしれませんので、しっかり肝に銘じておきましょう。

カンガルーケアの注意点

元気に産まれた赤ちゃんでも、カンガルーケア中に容体が急変することが考えられます。

事故を防ぐために次のことを守りましょう。

カンガルーケア前の注意点

  • カンガルーケアのリスクについて、熟知している産院で行う(リスクについて説明を受けられるか)
  • カンガルーケア中のスタッフの対応について尋ねる(常にスタッフが側についているか、機械で呼吸などのモニタリングを行っている状態でないと危険がある)
  • 事前に、カンガルーケア中の赤ちゃんの状態(顔色、呼吸など)の確認方法について説明を受ける

カンガルーケア中の注意点

  • 赤ちゃんの動きがあるか注意する(ぐったりしていないか)
  • 少しでも様子がおかしいと感じることがあったら、すぐに医療スタッフに伝える
  • お母さん自身の体調がよくない時は、無理をせずにカンガルーケアを中断する

カンガルーケアの危険性

先に述べたように、カンガルーケア中に赤ちゃんの容体が急変することがあり得ます。

ただし、勘違いしないでいただきたいのは、カンガルーケア自体は危険なものではない、ということです。

問題の多くは、医療スタッフが赤ちゃんから目を離している間に起こっています。いつでも起こりうる、赤ちゃんの急変に気付けない状態にすることが問題なのです。

しかし、近年になってカンガルーケアが発達障害の原因になりうる、という報告がなされました。次にその説についてまとめてみます。

カンガルーケアすると発達障害になる確率が高まるって本当?

この説は、発達障害を誘発する原因のひとつが「低血糖症」である、という説から成り立っています。順序立てて説明すると、

日本の寒い分娩室で行われるカンガルーケアが、赤ちゃんを低体温にする

赤ちゃんの体内では体温調節が優先させて「低血糖症」を引き起こす

発達障害のリスクが増える

ということになります。

ただしこの説には否定的な意見が多くあります。そもそも、発達障害は産まれつきの脳の機能障害であるという考え方を定説としています。

そこから考えると「出産後のカンガルーケアは、産まれつきである発達障害の原因とはならない」ということになるからです。

しかし、発達障害のメカニズムが現在も解明されていないため、その原因もはっきりしていません。

ですから、正確なところはまだ分からない、というのが正直なところです。

次にまとめる事故例と合わせて、カンガルーケアを行うかどうかの判断材料にしてください。

カンガルーケアで実際に起きた事故とは

カンガルーケアの事故

元気に産まれた赤ちゃんが、その後に急変して蘇生処置が必要になったケースが0.024%あったという調査があります。

その急変が、カンガルーケア中に起きてしまうことがあるのです。実際にあったケースを2例ご紹介します。

妊娠36週5日で産まれた男児2718gのケース

出産後の呼吸などに問題が無かったため、カンガルーケアを実施するも10分でチアノーゼ(酸素不足により、唇や爪の色が青紫色になる状態)が出現、カンガルーケア中止

NICU(新生児の集中治療室)に入院、新生児感染症と診断された。

妊娠39週5日で産まれた女児2698gのケース

出産後の呼吸などに問題が無かったため、カンガルーケアを実施するも30分でチアノーゼが出現、カンガルーケア中止

NICUに入院、中枢性低換気症候群(呼吸中枢の産まれつきの障害)と診断された。

…このように、一見元気に産まれた赤ちゃんでも、重大な病気や障害を抱えていることもあるのです。

ですから、これらの急変はカンガルーケアをしていなくても起きていた可能性はあります。

カンガルーケア中でも、早期に発見できれば大事に至らずに済む事がありますが、発見が遅れてしまうと…。

悲しいことに、命を落としてしまう事故が実際に起きています。

まとめ

カンガルーケアには、母乳面や愛情面で、その後の育児をより豊かなものにできるメリットがあります。

しかし、一方でカンガルーケア中のトラブルによって、耐えがたい悲しみに見舞われてしまうご家族がいることも事実です。

出産直後の赤ちゃんの急変に、常に対応できるような環境の下で行うカンガルーケアが望ましいと言えますが、お産の現場では医療スタッフの目が届かない時間が生まれてしまうこともある、というのが実情かもしれません。

これからお産を迎える妊婦さんには、これらのことを踏まえてカンガルーケアを受けるかどうかの判断をしていただきたいと思います。

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